『リーンスタートアップ』はコストや時間を最小限に抑え、短期間で製品・サービスをリリースし、顧客からのフィードバックをもとに改良を加えていくという製品開発・マネジメント手法です。
著しい成長を遂げるユニコーン企業の多くもこの手法を取り入れています。
この記事ではリーンスタートアップの考え方を3分で理解できるように、図解を交えながら解説していきます。
リーンスタートアップとは?
リーンスタートアップの概念は、生産工程における無駄を徹底的に省くことを目的にしたリーン生産方式を参考に生まれた製品開発・マネジメントの手法です。
そもそも、リーン生産方式はトヨタ自動車の生産方式を基に、マサチューセッツ工科大学が体系化したもの。
リーン(LEAN)はぜい肉がなく引き締まった身体を意味します。
特徴としては、必要最低限の機能・サービスを備えた製品を素早くリリースして、顧客の反応を検証して、そこからの学びを改良に活かすというものです。
従来式の製品開発では、完璧な製品を出そうと仮説・構築に多くのコストと時間が割かれていました。
そのため、いざ製品をリリースして、顧客の反応がいまいちであった場合には、仮説・構築に費やした多くのコストと時間が無駄になってしまいます。
これを最小限に抑えるという考えがリーンスタートアップの根底にあります。
リーンスタートアップの基本
リーンスタートアップの基本は次の4つです。
- 顧客からのフィードバックに重きを置く
- 実用最小限の製品(MVP)の反応を見る
- 革新会計で客観的に評価する
- ピボットを図る
顧客からのフィードバックに重きを置く
リーンスタートアップでは顧客からのフィードバック(反応)による学びに重きを置きます。
立派で高度な機能があったとしても、顧客に必要とされなければ使ってもらえません。
そこで、次に説明する実用最小限の製品(MVP)に対する顧客のフィードバックから学びを得ます。
実用最小限の製品(MVP)の反応を見る
実用最小限の製品(MVP)の製品・サービスを素早くリリースして、アーリーアダプターと呼ばれる流行に敏感な人々に製品・サービスを試してもらい、その反応から学びを得ます。
革新会計で客観的に評価する
検証には製品・サービスの評価に適した方法を適用します(本書では「革新会計」と呼んでいます)。
検証方法は、「行動しやすさ」「分かりやすさ」「チェックしやすさ」の3つを備えている必要があります。
例えば、動画配信サービスのように有料会員になってもらうことで収益を得るサービスがあったとします。
こうしたサービスを評価するのには次のようなコホート分析が適しているとしています。
サービスを全く利用しない層の割合は増え、有料会員になる顧客の割合は変わりません。
成長を続けるには何らかの変化が必要なように見えます。
一方で従来のような累計で見てしまうと次のようになります。
有料会員数の伸びはイマイチですが、その他の数値は順調に伸びているように見えてしまいます。
このように製品・サービスの成長を客観的に評価する検証方法が必要としています。
ピボットを図る
検証結果に基づき、必要であれば方針転換(ピボット)を図ります。
これが新たな戦略的仮説となります。
これらの手順を素早く繰り返し、製品・サービスを改良していきます。
スピードアップを図る
リーンスタートアップはコストだけではなく、製品・サービス開発に掛かる時間の最小化も目的としています。
スピードアップを図る方法として次の4つが示されています。
- バッチサイズの縮小
- 3つの成長エンジンから一つに絞る
- 順応性の高い組織を作る
- イノベーションの3つの前提条件を揃える
バッチサイズの縮小
バッチサイズは縮小することを推奨している。
「手紙を折る」「封入」「ラベル貼り」をそれぞれ別の者が作業すると、バッチサイズは”3″ということになる。
これらをすべて一人で行えばバッチサイズは”1″となる。
バッチサイズは小さい方が効率は高まる。これは様々な方法で実証されている。
3つの成長エンジンから一つに絞る
企業、事業が成長するエンジンは大きく3通りある。
「粘着型成長エンジン」は大規模システムなどのように切替が難しく、顧客が使い続けていれば収益が入ってくるモデル。新規顧客獲得率が解約率を上回れば成長することができる。
「ウイルス成長エンジン」はWebメールやSNSに代表されるように、顧客がサービスを利用することで新たな顧客を連れてくるというもの。顧客が増え、その顧客がサービスを利用してくれれば爆発的に広まることになる。
「支出型成長エンジン」はいわゆる広告のこと。生涯価値(LTV,Life Time Value)が顧客獲得単価(CPA,Cost Per Acquisition)を上回ることで成長がすることができる。
本書では、スタートアップにおいてこれらの成長エンジンは一つに絞るべきだと提唱している。
順応性の高い組織を作る
順応性の高い組織を作るには「5つのなぜ?」を問う習慣、小さなバッチサイズに順応させることが必要であるとしています。
イノベーションの3つの前提条件を揃える
イノベーションを生む組織には3つの要素が必要としている。
1つ目は「少ないが確実な予算」。大き過ぎても問題だし、何らかの問題で削られてしまう予算でもない。少ないが確実な予算内で工夫しながら成果を出す。
2つ目は「自由に開発できる裁量権」。機能を追加したり、削除したりするのに、あらゆる承認を得ずとも進められる裁量権が必要であるとしている。
3つ目は「成果と個人的利益のリンク」。米国では大企業であっても新規事業・新製品の成功の暁には責任者に高いリターンが設けられています。
これらはイノベーションを作るための前提条件であり、イノベーションを約束するものではないことに注意しましょう。
リーンスタートアップは変化の激しい現代において必要となる概念
リーンスタートアップについてざっくり解説をしてきました。
変化の激しい現代のビジネス環境において、この考え方は必須です。
画期的な製品ができると開発を始め、途中様々な機能の追加に追われ、リリースの頃には時代遅れの製品が出来上がってしまったということも考えられるでしょう。
起業家はもちろん、事業開発、サービス開発に関わる方は、リーンスタートアップの概念を理解しておく必要があります。