2018年に刊行され世界中で大ベストセラーとなっている『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』。
日本でも2020年上半期ベストセラー第1位となるなど、発売から2年近く経とうとしていますが、未だに人気は途絶えません。
この記事では『FACTFULNESS』の内容を3分でざっくり理解できるように図解を交えて解説します。
まだ読んでいない方には「読んでみよう」というキッカケに、もう読んだという方には復習になりましたら幸いです。
FACT FULNESS(ファクトフルネス)とは?
私たちの頭の中には「世界は悪くなっている」という思い込みがあります。
戦争や暴力は増え、自然災害で亡くなる人も多くなり、貧困も無くならない。
しかし、筆者は「人間にはドラマチック本能があり、物事を極端に見てしまうせいだ」としています。
データが示す事実では世界は徐々に良くなっています。
戦争での死者は減り、自然災害で亡くなる人も減り、極度の貧困から抜け出す人も増えています。
『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』はドラマチックな本能を抑え、事実・データに基づいて正しく世界を見る10の方法を示しています。
1.分断本能を抑える
「先進国」「発展途上国」という言葉があります。
ざっくり言ってしまえば「金持ち国」と「貧困国」。
私たちは世界をこの2つのグループに分断しがちです。
これが「分断本能」です。
しかし、実際には所得に応じてレベル1〜4の4段階に分類ができるとしています。
そして最も多いのがレベル2、3の中間層です。
2つの極端な分類ではなく、大半がどこに属しているのか見抜こうというのが「1.分断本能を抑える」です。
2.ネガティブ本能を抑える
人はネガティブなことに目が行きがちです。
メディアも飛行機事故や自然災害などの惨状を多く報道しています。
しかし、飛行機事故の数は劇的に減り、自然災害による死者数も過去100年で半分以下になっています。
ネガティブなことばかりに目を向けるのではなく、少しずつ良くなっている事実にも目を向けようというのが「2.ネガティブ本能を抑える」です。
3.直線本能を抑える
まっすぐなグラフを見せられると、傾向はそのまま続くと思ってしまいがちです。
例えば世界の人口。
現在世界の人口は約76億人。「このままのペースで人口は増え続けるのでは?」と思ってしまいがちです。
しかし、世界の人口増加ペースは今後鈍化すると考えられ、2100年頃に100〜120億人で安定すると考えられています。
グラフは常に一定ではなく、必ずどこがで曲がるということを認識しようというのが「3.直線本能を抑える」です。
4.恐怖本能を抑える
むやみやたらにリスクを恐れていては、まともな判断をすることはできません。
飛行機事故や自然災害は恐ろしいものです。
しかし、リスクは「危険度」と「頻度」の掛け算で決まります。
飛行機事故の確率は劇的に下がり、自然災害での死亡率は100年前のわずか6%となりました。
むやみやたらに恐れるのではなく、落ち着いてリスクを計算しましょうというのが「4.恐怖本能を抑える」です。
5.過大視本能を抑える
大きな数字を見せられると、それだけで思考が停止してしまいます。
2016年に亡くなった赤ちゃんの数は420万人でした。
これだけ見ると、悲しい現実があるんだなと感情的になってしまいます。
では2015年はどうか?答えは440万人。
2014年はどうか?450万人。
1950年は1440万人。
数字ひとつだけを見て物事を考えるのではなく、必ず比較をしようと筆者は言っています。
これが「5.過大視本能を抑える」です。
6.パターン化本能を抑える
ひとつの集団パターンを根拠に物事を見てしまいがちです。
例えば「アフリカ」と一括にしても、多くの人がイメージする文明機器に頼らずに生活している人々は一部に過ぎません。北部はイスラム文化圏ですし、経済発展を遂げた南アフリカでは近代的な街が作られています。
ひとつの集団パターンを根拠に物事が説明されていたら、まずは分類を疑おうとしています。
これが「6.パターン化本能を抑える」です。
7.宿命本能を抑える
人の考え方、国、宗教、文化など色々なものはゆっくりと変化しています。
本書では取り上げられていませんが、アフリカにルワンダという国があります。
映画『ホテル・ルワンダ』の舞台であり、1994年に当時730万人の人口のうち100万人前後が100日間でルワンダ国民同士間で虐殺された場所です。
「農業が主要産業で、生活様式は何十年も変わっていない」と思ってしまう人も多いと思います。
しかし、ルワンダは虐殺から20年で劇的な進化を遂げ、ICTが主要産業となり、ドローンで医薬品を配送するというサービスも登場しています。
国や文化によって、「あの人たちの生活はこうで、ずっと変わらない」と思い込んでしまうのが宿命本能です。
色々なものはゆっくりですが変化しています。そのことに気付こうというのが「宿命本能を抑える」です。
8.単純化本能を抑える
ひとつの視点、考え方だけでは世界を理解することはできません。
様々な角度から問題を見たほうが全体像を捉えやすく、正確に理解することができます。
自分の専門外のことを知ったかぶりで考えるのではなく、その道のプロの力を借りるようにしましょう。
トンカチだけで振り回していても家は建ちません。
ドライバーやレンチやスパナなど様々な道具(専門家)を揃えるようにしましょう。
これが「8.単純化本能を抑える」です。
9.犯人探し本能を抑える
なにか問題が起きると特定の人やグループを犯人にして責めがちです。
これが「犯人探し本能」です。
しかし、誰かを責めると原因に目が向かず、問題の根本解決に繋がりません。
問題は誰か一人が原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合った結果であることがほとんどです。
誰かを責めるのではなく、複数の原因・システムに目を向けようというのが、「犯人探し本能を抑える」です。
2020年10月1日、東証がシステム障害によりその日の全取引を停止しました。
基幹システムを納入したのは富士通ですが、東証は「富士通に対して損害賠償を求めない」姿勢を表明しています。
誰かを犯人にして責めても、根本解決には繋がらないのです。
10.焦り本能を抑える
「今すぐ決めなければいけない」「今すぐ行動しなければいけない」ことはよくよく考えてみればそれほど多くはありません。
今後100年で地球の平均気温は暖かくなると気候の専門家は予測していますし、おそらく多くの方が「そうだろうな」と考えていることでしょう。
しかし、「今すぐなにかアクションをしなければならない」ということはありません。
焦ってなにかをするのではなく、データにこだわり小さな一歩を積み重ねることが大事だとしています。
これが「焦り本能を抑える」です。
『FACT FULNESS』は正しい物事の見方を示してくれる
『FACT FULNESS』は正しい世界の見方を示してくれています。
ただ、実際に読んでみると「世界」というより、「あらゆる物事」にも通じるなと思いました。
この記事ではざっくり内容を説明するだけでかなり端折っていますが、本書には具体例も示しながら、正しい世界の見方について深く書かれています。
「まだ読んでいない」という方はぜひ手にとって読んで頂きたいなと思います。